技術・トレンド
社内データや外部ツールをAIに操作させる前に
まとめ:AIエージェントを業務に入れる前に押さえたいのは、次の3点です。
MCP(Model Context Protocol)は、AIと社内システム・外部ツールをつなぐ接続規格の一つです。情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では、AIの利用全般を対象とする「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれ、3位に入りました。
レイ・フロンティアは、位置・行動データのように個人に結びつきやすいデータを扱う会社として、AIを業務に組み込む前に確かめたい点をこの記事に整理しました。ランサム攻撃など、サイバー攻撃の全体像はIPAの資料をご覧ください。内容は2026年10月時点のものです。
これまでの生成AIは、主に「質問に答えるAI」でした。AIエージェントは、指示を受けてファイルを読み、メールを送り、社内システムを操作する「操作するAI」です。
| 答えるAI | 操作するAI(AIエージェント) | |
|---|---|---|
| できること | 質問に答える、文章を要約する、下書きを作る | ファイルを読み書きする、メールを送る、社内システムを検索・更新する |
| 触れるデータ | 人が入力した内容 | AIに使うことを許可したシステムやファイルのデータ |
| 起きうること | 入力した情報が外に出る | それに加えて、意図しない送信・更新・削除が起きる |
チャットに入力するだけでも、情報の管理は必要です。そのうえで、ファイルの読み込みやWeb閲覧、外部サービスとの連携を使い始めると、AIが自分で情報を取りに行き、操作もするようになります。確かめることが増えるのは、ここからです。MCPは、こうした連携を共通の方式でつなぐための規格です。
次の6つは、OWASP(ソフトウェアの安全性に取り組む国際的な非営利団体)の「OWASP Top 10 for LLM Applications 2025」と、MCPの仕様・安全面の資料をもとに、導入する側が確かめる順に当社が整理したものです。起きる頻度の順ではありません。

Webページやファイル、つないだツールの説明文や返ってくる結果に紛れた指示を、AIが本来の指示と区別できずに従ってしまうことがあります。OWASPは、確実に防ぐ方法があるかは分からないとしています。被害を小さくする工夫が欠かせません。
(当社製品の事例ではない、一般的な架空の例)ある企業が、自社の店舗の売上データの集計をAIエージェントに頼んだとします。このAIにはメール送信の機能も持たせていました。AIは読み込んだ資料に紛れた不正な指示に従い、集計結果を社外に送ってしまうことがありえます。この例では、資料の中の指示に従ってしまうことに加えて、集計には要らない送信の機能を持たせ、送信先の制限や実行前の承認がなかったことが、情報の持ち出しにつながります。
必要以上の機能や権限を持たせ、重要な操作を確認なしに実行させると、誤作動したときの被害が大きくなります。これとは別に、AIが作った文を確かめないまま、データベースの命令やコマンドとして実行してしまう問題もあります。
外部のMCPサーバや、手元の端末で動かすMCPサーバは、提供元や更新の経路が信頼できないと、それ自体が攻撃の入口になります。MCPサーバの先につなぐ外部サービスも、提供元が信頼できるかを確かめる対象です。端末で動かすMCPサーバは、起動したアプリの権限で、ファイルや通信先にアクセスできる場合がある点にも注意が必要です。
AIに渡した情報や、AIが読み取った情報が、回答や送信を通じて外へ出ることがあります。AIサービスの規約によっては、入力が学習に使われたり、一定期間保存されたりします。
つなぐ先にログインするための鍵(APIキーやトークン)を、複数の人で共有して広い権限のまま使っていると、漏れたときの被害が大きくなります。
誰が、どのツールを、いつ使ったかが残っていないと、異常の発見や原因の追跡が難しくなります。記録を残すだけでなく、異常を知らせる仕組みも必要です。呼び出しが増えすぎて、費用がかさんだりサービスが止まったりすることもあります。
まずは試行(PoC)として、ダミーや機密でないデータと、読み取りに限った権限から始めます。MCPの安全面の資料(実装する人向け)も、最初は読み取りなどの危険の少ない操作に限った権限から始め、必要になった時点で広げる方法を勧めています。導入する側も、同じ考え方で始められます。

このチェックリストは確認の出発点であり、安全を保証するものではありません。分からない項目は「はい」にせず、担当と期限を決めて確かめてください。
| 確認すること | なぜ必要か | 確認先 | 「いいえ」のときの次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1. 使う業務とデータの範囲が決まっている | 範囲が広いほど被害も広がる | 業務の担当・情報システム部門 | ダミーのデータで試す 担当: 期限: |
| 2. AIに渡す機能と権限が最小になっている | 誤作動の被害を小さくする | つなぐ先の権限設定 | ダミーのデータと、読み取りに限った権限で試す 担当: 期限: |
| 3. 重要な操作に人の承認が入る | 意図しない送信や削除を減らす | ツールの設定・運用手順 | 承認の手順を入れてから使う 担当: 期限: |
| 4. つなぐ先の提供元と通信先を確かめた | 構成要素が攻撃の入口になりうる | 提供元の資料・情報システム部門 | 確かめられたものだけ使う 担当: 期限: |
| 5. 鍵が個人・用途ごとに分かれている | 漏れたときの影響を絞る | 鍵を発行した管理画面 | 共有の鍵を使わない 担当: 期限: |
| 6. 操作の記録・異常の通知・利用の上限がある | 異常に気付き、止められる | 記録の設定・請求の設定 | 記録・通知・上限を設定する 担当: 期限: |
| 7. 学習への利用・保存・国外送信を確かめた | 入力した情報の行き先を知る | 契約書・利用規約 | 機密の情報を入れない 担当: 期限: |
| 8. 止める人と止め方が決まっている | 事故の被害を広げない | 運用手順・連絡体制 | 停止の手順を先に決める 担当: 期限: |
| 9. 社内規程に反映し、利用を把握している | ルールがないと管理できない | 情報セキュリティ規程 | 規程に項目を追記する 担当: 期限: |
レイ・フロンティアは、セキュリティの専門会社ではありません。そのうえで、位置・行動データとAIのサービス開発では、扱うデータと利用目的、同意や権限、AIに渡す情報の範囲を、システムの構成を検討する段階で整理しています。このチェックリストも、その整理の考え方をもとにまとめました。
代表の田村 建士は、2025年11月から八幡平市 DX戦略統括アーキテクト、2026年から総務省アドバイザー(地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業/DX関係)、2026年9月から岩手町AI推進アドバイザーを務め、自治体の生成AI利用ガイドラインの整備や職員研修にも携わっています(会社概要)。「導入の前に決めておくこと」の「社内ルール・教育」は、こうした現場で必要になる項目です。
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の環境での安全性を保証するものではありません。内容は2026年10月時点のものです。
このチェックリストで確かめてみて、判断に迷う点があればご相談ください。AIの導入を、安全に進める条件の整理から一緒に検討します。
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